物性物理学
自由電子気体とフェルミ準位
自由電子模型では伝導電子を大きな体積中のフェルミ粒子気体として扱い、フェルミ=ディラック統計に従います。T=0 で状態を満たすとフェルミ面、フェルミエネルギー、縮退圧が定まります。
最も単純なモデルではイオン格子ポテンシャル、電子間相互作用、散乱を無視し、伝導電子を箱中の自由粒子とします。単純ながらフェルミ尺度の見積もりや金属電子比熱の小ささを説明できます。
定義: フェルミエネルギーと波数
n は電子密度、m は電子質量(適切なモデルでは有効質量)です。kF は等方的な3次元k空間における球状フェルミ面の半径で、EF は T=0 でのそのエネルギーです。
状態数の計数
体積V、スピン2重縮退で、半径kFの球内の状態数は N=VkF³/(3π²) です。n=N/V と置くと上式を得ます。スピン縮退2は含まれており、これを落とすと密度が大きく誤ります。
三次元の放物線分散では状態密度はエネルギーの平方根に比例します。フェルミ準位より深い状態は満たされているため、温度上昇で占有が変わるのは EF 近傍の約 kBT の薄い層だけです。
例: 例題
密度 n が8倍になると EF はどう変化しますか。
解答
EF ∝ n^(2/3) より、8^(2/3)=4倍になります。
確認問題
フェルミ球は、二つのスピン状態を数えながら波数を kF まで満たすことで生じます。T=0 の量子圧力は熱起源ではなく、パウリ排他原理により圧縮すると kF と全エネルギーが増加するためです。三次元自由電子気体のエネルギー密度は 3nEF/5、圧力は 2nEF/5 です。クーロン相互作用や格子効果が重要なら、より完全な模型が必要です。
実金属のフェルミ面は通常球形ではありません。周期ポテンシャルがバンドを変形させ、電子や正孔の複数のポケットを作ることがあります。磁場中のド・ハース=ファン・アルフェン振動はフェルミ面の極値断面を明らかにします。自由電子気体は直観の出発点であり、輸送特性の定量値はバンド構造と有効質量が決めます。
電子密度が8倍ならフェルミエネルギーは何倍ですか。
該当する分布の分母の符号はどちらですか。
参考文献
- Landau, Lifshitz (1980). Statistical Physics
- Charles Kittel, Herbert Kroemer (1980). Thermal Physics